概要
お布施とは、仏教の葬儀や法要で僧侶に渡す謝礼のこと。読経・戒名授与・法話などに対するお礼として包む。
鎌倉新書「第5回お葬式に関する全国調査(2022年)」によると、葬儀時のお布施の全国平均は22.4万円。金額帯では「1万円以上〜10万円未満」が28.4%と最も多く、次いで「10万円以上〜20万円未満」が23.9%となっている。
お布施には定価がなく、寺院・宗派・地域・戒名のランクによって大きく異なる。「いくら包めばよいか」は菩提寺に直接確認するのが確実だが、ここでは統計データと一般的に知られている相場を整理する。
戒名とは、故人に授けられる仏教上の名前。浄土真宗では「法名」、日蓮宗では「法号」と呼ぶ。戒名のランク(位号)によって費用が大きく変わるのが特徴。
選択肢一覧
お布施が発生する場面
| 場面 | お布施の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 葬儀(通夜・告別式) | 15万〜50万円 | 戒名料を含む場合と別途の場合がある |
| 初七日法要 | 3万〜5万円 | 葬儀当日に繰り上げる場合、葬儀のお布施に含まれることが多い |
| 四十九日法要 | 3万〜5万円 | — |
| 一周忌・三回忌 | 3万〜5万円 | — |
| 七回忌以降 | 1万〜5万円 | — |
| 納骨法要 | 1万〜5万円 | 四十九日と同日に行う場合は別途不要のことが多い |
※ 法要のお布施の詳細は法要の種類と費用を参照。
戒名のランク(位号)と費用の目安
戒名は以下のようなランク構成になっている。上位になるほど費用が高くなる。
| ランク(位号) | 対象 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 信士(しんじ)/ 信女(しんにょ) | 一般的な戒名 | 10万〜50万円 |
| 居士(こじ)/ 大姉(だいし) | 社会的貢献や信仰心が篤い方 | 50万〜80万円 |
| 院信士 / 院信女 | 寺院への貢献が大きい方 | 30万〜100万円 |
| 院居士 / 院大姉 | 最も格式の高い戒名 | 100万円以上 |
※ 金額はあくまで一般的に見られる範囲であり、寺院ごとに異なる。戒名の費用はお布施に含めて渡すのが一般的。
宗派による呼称と体系の違い
| 宗派 | 呼称 | 体系の特徴 |
|---|---|---|
| 浄土宗 | 戒名 | 誉号(よごう)が付く場合がある。信士〜院居士の4段階 |
| 浄土真宗 | 法名 | 「釋(しゃく)」「釋尼」と「院釋」「院釋尼」の2段階。帰敬式(ききょうしき)を受けて法名をいただく |
| 曹洞宗 | 戒名 | 信士〜院居士の4段階 |
| 臨済宗 | 戒名 | 信士〜院居士の4段階。道号が付くのが一般的 |
| 真言宗 | 戒名 | 戒名の上に梵字(ア字)が付く。信士〜院居士の4段階 |
| 天台宗 | 戒名 | 信士〜院居士の4段階 |
| 日蓮宗 | 法号 | 「日」の字が入る。居士/大姉〜院居士/院大姉 |
費用の相場
葬儀時のお布施(戒名料込み)の全国平均
鎌倉新書の全国調査における、葬儀のお布施(戒名料・読経料を含む一式)の平均推移は以下のとおり。
| 調査 | 平均額 |
|---|---|
| 第4回(2020年) | 23.7万円 |
| 第5回(2022年) | 22.4万円 |
※ お布施の平均額は緩やかな減少傾向にある。家族葬の増加に伴い、戒名のランクを抑える傾向や、戒名を付けない選択をする家庭が増えていることが背景にある。
お布施の金額分布
鎌倉新書「第5回お葬式に関する全国調査(2022年)」による金額帯別の割合。
| 金額帯 | 割合 |
|---|---|
| 1万円以上〜10万円未満 | 28.4% |
| 10万円以上〜20万円未満 | 23.9% |
| 20万円以上〜30万円未満 | 15.3% |
| 30万円以上〜50万円未満 | 12.0% |
| 50万円以上 | 10.0% |
| 1万円未満(お布施なし含む) | 10.4% |
お車代・御膳料の目安
お布施とは別に、以下を包むのが一般的。
| 項目 | 金額の目安 | 内容 |
|---|---|---|
| お車代 | 5,000〜10,000円 | 僧侶の交通費として渡す。寺院で行う場合は不要 |
| 御膳料 | 5,000〜10,000円 | 会食に僧侶が参加しない場合に渡す |
費用の具体例:一般葬でお布施を渡す場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 葬儀のお布施(読経料+戒名「信士」) | 25万円 |
| お車代(通夜+告別式の2日分) | 1万円 |
| 御膳料(精進落としに不参加) | 1万円 |
| 合計 | 約27万円 |
※ 戒名のランクを上げる場合や、葬儀形式によって金額は大きく変わる。葬儀形式別の費用は一般葬の費用と手続き・家族葬の費用と手続き・一日葬の費用と手続き・直葬の費用と手続きを参照。
手続きの流れ
Step 1: 菩提寺に連絡する
葬儀が決まったら、まず菩提寺に連絡して僧侶の手配を依頼する。この際、戒名についての希望があれば伝える。
Step 2: お布施の金額を確認する
菩提寺に「お布施はどの程度お包みすればよいでしょうか」と確認する。直接聞くことに問題はなく、多くの寺院では目安を教えてくれる。
Step 3: 戒名のランクを決める
故人・家族の希望と費用を踏まえて、戒名のランクを決める。先祖の戒名と同じランクまたは下のランクにするのが一般的とされている。
Step 4: お布施を準備する
- 封筒: 白い無地の封筒、または「御布施」と印刷された不祝儀袋を使用する
- 表書き: 「御布施」と書く(「お経料」「戒名料」とは書かない)
- 墨: 薄墨ではなく、通常の濃い墨で書く
- 紙幣: 新札でも旧札でも構わない
- お車代・御膳料: お布施とは別の封筒に入れる
Step 5: お布施を渡す
- タイミング: 葬儀・法要の開始前、または終了後に渡す
- 渡し方: 切手盆(きってぼん)または袱紗(ふくさ)の上に乗せて渡す
- 言葉: 「本日はよろしくお願いいたします」(開始前)、「本日はありがとうございました」(終了後)
菩提寺がない場合
菩提寺がない場合は、以下の方法で僧侶を手配できる。
- 葬儀社からの紹介: 葬儀社が提携寺院を紹介してくれる
- 僧侶派遣サービス: 定額制でお布施の金額が明示されている場合が多い
自治体の支援制度
お布施・戒名に対する自治体の補助金・支援制度はない。
葬儀費用全般の支援(国民健康保険の葬祭費等)については一般葬の費用と手続きを参照。
注意点・よくあるトラブル
- 金額を聞きにくい問題: 「お気持ちで」と言われて困るケースが多い。具体的に「他の方はどの程度包まれていますか」と聞けば、目安を教えてもらえることが多い
- 戒名のランクと先祖の関係: 先祖より高いランクの戒名を付けることは問題ないが、低いランクにすると親族から異議が出ることがある。事前に相談しておく
- 離檀料とのトラブル: 墓じまいの際に高額な離檀料を請求されるケースがある。離檀料に法的根拠はない。詳細は墓じまいの費用と手続きを参照
- 戒名を付けない選択: 仏教徒でない場合や、無宗教葬・直葬を選ぶ場合は戒名を付けないことも可能。ただし菩提寺がある場合は事前に相談が必要
- 生前戒名の検討: 生前に戒名を授かっておくと、費用が抑えられる場合がある。菩提寺に相談する
調べてみて気づいたこと
お布施の金額は「お気持ちで」と言われることが多く、公式な料金表が存在しない。鎌倉新書の調査データはあくまで「利用者が実際に支払った金額」の集計であり、「相場」として引用する際は注意が必要。寺院側は「お布施は対価ではなく布施行(修行の一つ)」という立場をとっている。
戒名のランク(信士・居士・院号等)によってお布施の金額が変わる慣行は広く知られているが、宗派によって戒名の体系自体が異なる。浄土真宗では「戒名」ではなく「法名」と呼び、ランクによる料金差が比較的小さい傾向がある。
お布施の金額に地域差があることも調査で確認できた。都市部と地方で平均額に差があり、檀家数や寺院経営の状況も影響していると考えられる。費用面の情報は限られているが、同じ宗派・同じ地域の複数の寺院に確認するのが現実的なアプローチ。
出典・公式情報リンク
出典: 鎌倉新書「第5回お葬式に関する全国調査(2022年)」(2026年4月閲覧)
出典: 鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」(2026年4月閲覧)
出典: 生命保険文化センター「葬儀にかかる費用はどれくらい?」(2026年4月閲覧)
出典: 厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律の概要」(2026年4月閲覧)
調査カード
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査日 | 2026年4月3日 |
| 調査範囲 | 葬儀・法要のお布施相場、戒名のランク別・宗派別費用、お車代・御膳料 |
| 主な情報源 | 鎌倉新書全国調査(第5回・第6回)、生命保険文化センター、厚生労働省 |
| 未調査項目 | 地域別のお布施相場差、各宗派公式のお布施に関する見解、オンライン法要のお布施相場 |