概要
エンディングノートとは、自分の財産・保険・連絡先・医療や葬儀の希望などを一冊にまとめておくノート。本人が元気なうちに記入し、万一の際に遺族や関係者が必要な情報にアクセスできるようにする実用的なツールとなる。
エンディングノートには法的拘束力がない。財産の分割について法的効力を持たせるには遺言書が必要となる。ただし、遺言書ではカバーしにくい情報(デジタル資産のパスワード、葬儀の希望、連絡先リストなど)をまとめておける点にエンディングノートの実用性がある。
選択肢一覧
エンディングノートの入手方法にはいくつかの選択肢がある。
| 種類 | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自治体配布の無料版 | 無料 | 市区町村窓口・地域包括支援センターで入手。項目が整理されている |
| 市販のエンディングノート | 500〜2,000円程度 | 書店・文具店で購入。デザインや項目の充実度で選べる |
| ウェブ・アプリ版 | 無料〜有料 | スマートフォンやパソコンで入力。更新が容易 |
| 白紙ノートに自作 | 実質無料 | 自由に書けるが、項目の漏れが生じやすい |
どの方法を選んでも記載する内容は同じ。重要なのは「書くこと」と「保管場所を家族に伝えること」の2点となる。
費用の相場
エンディングノートの作成自体にかかる費用はほぼない。
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 自治体配布のノート | 無料 |
| 市販のノート | 500〜2,000円程度 |
| アプリ・ウェブサービス | 無料〜月額数百円程度 |
エンディングノートに記載した希望を法的に有効にするために遺言書を作成する場合は、別途費用が発生する。詳細は遺言書の種類と書き方を参照。
手続きの流れ
エンディングノートに決まった書式はないが、以下の項目を網羅すると遺族にとって実用性が高い。
Step 1: 基本情報を記入する
- 氏名、生年月日、住所、本籍
- マイナンバー(個人番号)の記載場所
- 健康保険証、年金手帳の保管場所
Step 2: 財産の情報をまとめる
- 預貯金(金融機関名・支店名・口座番号・届出印の保管場所)→ 死亡後の口座凍結については銀行口座の凍結・名義変更の手続きを参照
- 不動産(所在地・登記簿の保管場所)
- 有価証券(証券会社名・口座番号)
- 生命保険・医療保険(保険会社名・証券番号・受取人)→ 詳細は生命保険・医療保険の手続きを参照
- 借入金・ローン(金融機関名・残高の目安)
- 年金(種類・基礎年金番号)
- その他の資産(貴金属、美術品、車両など)
Step 3: デジタル資産を整理する
- メールアカウント(サービス名・ID)
- SNSアカウント(LINE、Facebook、X など)
- ネット銀行・ネット証券の口座
- 有料サブスクリプション(動画配信、クラウドストレージなど)
- スマートフォン・パソコンのロック解除方法
- ID・パスワードの管理方法と保管場所
デジタル資産の整理の詳細はデジタル終活の進め方を参照。
Step 4: 医療・介護の希望を記入する
- かかりつけ医の連絡先
- 持病・服用中の薬・アレルギー
- 延命治療に関する希望
- 臓器提供の意思
- 介護が必要になった場合の希望(在宅介護・施設入所など)
Step 5: 葬儀・埋葬の希望を記入する
Step 6: 連絡先リストを作成する
- 親族の連絡先
- 友人・知人の連絡先(葬儀に連絡してほしい人)
- 職場・取引先の連絡先(必要な場合)
- 専門家の連絡先(顧問弁護士・税理士・司法書士など)
Step 7: その他の情報を記入する
- 遺言書の有無と保管場所 → 遺言書の種類と書き方を参照
- 死後事務委任契約の有無と受任者の連絡先 → 死後事務委任契約を参照
- 身寄りのない方は、遺言書・死後事務委任契約・任意後見契約との組み合わせが重要 → おひとりさまの終活ガイドを参照
- ペットの引き取り先 → ペット信託・ペット後見の費用と手続きを参照
- 形見分けの希望
Step 8: 保管場所を家族に伝える
- エンディングノートの保管場所を家族に伝えておく
- 金庫や机の引き出しなど、遺族が探しやすい場所に保管する
- デジタル版の場合は、ファイルの保存先とアクセス方法を共有する
- 定期的に内容を見直し、変更があれば更新する(年に1回程度が目安)
自治体の支援制度
エンディングノートに関連する自治体の支援は比較的充実している。
- エンディングノートの無料配布: 多くの市区町村で、窓口や地域包括支援センターを通じてエンディングノートを無料配布している。項目があらかじめ整理されており、初めて書く人にも使いやすい
- 終活セミナーの開催: 社会福祉協議会や地域包括支援センターが、エンディングノートの書き方講座や終活セミナーを定期的に開催している自治体がある
- 終活登録制度: 横須賀市の「わたしの終活登録」(2018年開始)が先駆的事例。エンディングノートの保管場所、緊急連絡先、遺言書の保管場所、葬儀の希望などを市が登録・保管し、万一の際に関係者に開示する制度
- 終活相談窓口: 地域包括支援センター等で、エンディングノートの書き方を含む終活全般の相談を受け付けている自治体がある
各自治体の支援制度の詳細は地域別情報を参照。
注意点・よくあるトラブル
- 法的拘束力がない: エンディングノートに「長男に自宅を相続させる」と書いても法的効力はない。財産の分割には遺言書が必要。エンディングノートと遺言書を補完的に活用するのが実用的
- 保管場所を伝えていない: せっかく書いても、遺族が見つけられなければ意味がない。保管場所を家族に伝えておくことが最も重要
- 情報が古いまま放置される: 口座の開設・解約、保険の変更、連絡先の変更などがあった場合、ノートの内容も更新する必要がある
- 個人情報の管理: 口座番号やパスワードを記載するため、紛失や盗難に注意が必要。貸金庫に保管する場合は、貸金庫の存在自体を家族に伝えておく
- 家族の感情への配慮: 突然エンディングノートを見せると家族が動揺する場合がある。生前整理の一環として自然な形で共有するのも選択肢のひとつ
調べてみて気づいたこと
エンディングノートには法的拘束力がないという点は重要。遺産の分割方法を書いても、法的には遺言書のような効力はない。あくまで「家族への伝達手段」であり、法的な効力が必要な事項は別途遺言書を作成する必要がある。
調べてみると、多くの自治体が独自のエンディングノートを無料配布していることがわかった。市販品(1,000〜3,000円程度)と内容に大きな差はなく、自治体版には地域の相談窓口や手続き先が記載されている点がむしろ実用的。ただし、自治体版の存在を知らない人が多いようで、配布場所(区役所・地域包括支援センター等)の広報が課題に見える。
項目が多すぎて挫折するケースが多いという指摘もある。全項目を一度に埋めようとせず、まずは「医療の希望」「緊急連絡先」「デジタル資産の情報」など、本人にしかわからない情報から書き始めるのが現実的なアプローチ。
出典・公式情報リンク
- 出典: 法務省「自筆証書遺言書保管制度」(2026年3月閲覧)
- 出典: 政府広報オンライン「知っておきたい 終活のこと」(2026年3月閲覧)
- 出典: 消費者庁「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての調査報告」(2026年3月閲覧)
調査カード
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査日 | 2026-03-27 |
| 調査範囲 | エンディングノートの記載項目・入手方法・法的位置づけ・自治体の配布制度 |
| 主な情報源 | 法務省、政府広報オンライン、消費者庁 |
| 未調査項目 | 全国の自治体エンディングノート配布状況の網羅的調査、アプリ型サービスの比較、エンディングノートの利用率に関する統計 |